もりすの数学ブログ

大学入試数学の解説(仮)

2021 信州大学(医・理・経・工) 数学 大問3 解答&解説

こんにちは。もりすです。

今回は、信州大学(前期) [医・理・経・工]共通数学の大問3の解説を書いてみました。

大問3は図形と命題・確率(数学Ⅰ・A)に関する問題ですね。

(問題)

  箱の中に,2 と書かれた札 1 枚と,3 と書かれた札 2 枚が入っている. この箱から札を 1 枚引き,書かれている数字を見てから元に戻す.この試行を n 回繰り返す.  このとき, j 回目の試行で引いた札に書かれている数字を a_j とし, A_n=a_1 \cdot a_2 \cdot …… \cdot a_n とおく.さらに, A_n を 12 で割った余りを r_n とする. n\geqq3 のとき,以下の問いに答えよ.

(1) 2 と書かれた札が出る回数を p とする.このとき, r_n=6 となるためのp が満たす必要十分条件を求めよ.

(2) r_n=6となる確率を n を用いて表せ.

(3) r_n=0となる確率を n を用いて表せ.

 

私の解答

 

 

(1) 

A_nの因数は 2 と 3 のみである.   

12=2^2 \cdot 3 なので,r_n=0  \Leftrightarrow 2 が 2 枚以上 かつ 3 が 1 枚以上

               \Leftrightarrow  2\leqq p\leqq n-1 …… (※)   

よって, p=0,1,n の場合を調べる必要がある.  

[1]  p=0 のとき 

このとき,n(回)全て3を取り出したことになる.

3^3≡3  \left( \textrm{mod} 12 \right)  3^4≡3\cdot 3=9  \left( \textrm{mod} 12 \right)  3^5≡9\cdot 3≡3   \left(\textrm{mod} 12 \right)   

ここから, r_{n-1}=3 のとき, r_n=9r_{n-1}=9 のとき, r_n=3 

∴ r_n=\left\{\begin{array}{l}3 (nが奇数)  \\9 (nが偶数)\end{array}\right.   である.   

これは,題意を満たさない.  

[2]  p=1 のとき   

このとき,2は1回で 3はn-1 (回)取り出したことになる.

2\cdot 3^2≡6  \left( \textrm{mod} 12 \right)  2\cdot 3^3≡6  \left(\textrm{mod} 12\right)   

ここから,r_{n-1}=6 のとき, 6 \cdot 3≡6 \left(\textrm{mod} 12\right)なので,r_n=6    

∴ すべての自然数nに対して, r_n=6 である.   

これは,題意を満たす.  

[3]  p=n のとき,   

このとき,n(回)全て2を取り出したことになる.

2^3≡8  \left( \textrm{mod} 12 \right)  2^4≡16≡4  \left( \textrm{mod} 12 \right)  2^5≡4\cdot 2=8  \left( \textrm{mod} 12 \right)   

ここから, r_{n-1}=8 のとき, r_n=4r_{n-1}=4 のとき, r_n=8 である.   

∴  r_n=\left\{\begin{array}{l}8 (nが奇数)  \\4 (nが偶数)\end{array}\right.   

これは,題意を満たさない.  

[1],[2],[3] より, p=1 が必要条件となる.

十分条件に関しては,対偶である「p\neq 1 \Rightarrow r_{n}\neq 6」を示せばよい.

これについては,(※),[1],[3]にて立証済みである.

よって,対偶が真であるので 元の命題「r_{n}=6 \Rightarrow p=1 」も真.

以上から,r_n=6 \Leftrightarrow p=1 …(答)

 

(2)  

(1)より,2 が 1 回,3 が n-1 (回)出れば, r_n=6 となるので,   

反復試行の確率の式から,求める確率は    

_{n}\textrm{C}_1 \cdot \left(\dfrac{1}{3}\right)^1 \left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1}=\dfrac{n \cdot 2^{n-1}}{3^n} …(答)

(3)  

r_n=0 となる確率は,(1) の[1],[2],[3]の余事象であるので,   

[1] の場合の確率は 3 が n (回)出続ければ良いので, \left(\dfrac{2}{3}\right)^n

[3] の場合の確率は 2 が n (回)出続ければ良いので, \left(\dfrac{1}{3}\right)^n

∴ 求める確率は   

1-\left\{ \left( \dfrac{2}{3}\right)^n+\dfrac{n\cdot 2^{n-1}}{3^n}+\left( \dfrac{1}{3}\right)^n \right\}

=\dfrac{3^n-\left(n+2\right)2^{n-1}-1}{3^n} …(答)

 

いかがでしょうか.

解いた感じ,(1)は入試標準~応用問題.(2)(3)は教科書内容~入試基礎問題かなという印象でした.

本セットの一番の難問は本問の(1).必要性は簡単だが、十分性の証明をきちんと書けた受験生は全体の10%も満たないかも.「p=1のとき成り立つじゃん,終わり.」で記述を止めてしまうと,十分性を示していないため減点を食らうのは免れません.

同値関係で証明する方法が思いつかなかったため,本解答では対偶を使って証明しています.「対偶が真であれば,元の命題も真」という性質があるので,それを思い出せると証明が楽になります.

(2)以降は反復試行と余事象の基本問題なので,(1)は完全解答できなくとも(2)(3)だけでも持っていきたいところ.

ちなみに,2012年の旭川医科大学で対偶を使う証明が出題されています.

 

正の奇数pに対して,3つの自然数の組\left(x,y,z\right)で,x^2+4yz=pを満たすもの全体の集合をSとおく.すなわち,

S=\left\{\left(x,y,z\right)|x,y,z\,\,は自然数, x^2+4yz=p\right\}

次の問いに答えよ.

問1 S空集合でないための必要十分条件は,p=4k+1(k\,は自然数)と書けることであることを示せ.

問2 Sの要素の個数が奇数ならばSの要素\left(x,y,z\right)y=zとなるものが存在することを示せ.

  

当時受験生だった自分が出会った問題で,最初は直接解こうとしていました.必要性はmodを使えば示せることはすぐ分かった.しかし,十分性のところでペンが進まない.どうしたものか…と考えること10分.当時は受験生であったこともあり,高1,2の時のように一問に3~4日かけることができないため、thinking timeが10分を超えたら答えを見て知恵を頂くスタイルをとっていました.本問は塾の問題で与えられたので、そのときの先生(といっても医学科に進学した1つ上の先輩であるが…)に聞いて「対偶を使ってみ?」と返ってきて,ペンを進めるとあっさり解けてしまったのは今でも鮮明に記憶に残っています.そのため,必要十分条件の証明にはいつも対偶を考えるようになりました.

必要十分条件の証明では,「同値関係」を使いながら示すのが一番美しいが,「対偶を使って」証明することもできるということも覚えておくと,いざという時は役に立つでしょう.

 

長くなりましたが、ここまで見ていただきありがとうございました。

それでは、大問4以降は次回の記事で。