2021 信州大学(医・理・経・工) 数学 大問5 解答&解説
こんにちは。もりすです。
今回は、信州大学(前期) [医・理・経・工]共通数学の大問5の解説を書いてみました。
大問5は積分法(数学Ⅲ)に関する問題ですね。これは良問です。
(問題)
以下の問いに答えよ.
(1) 定積分 を求めよ.
(2) 定積分 を求めよ.
(3) を示せ.
私の解答
(1)
…(答)
(2)
被積分関数 について,
これを で割ると,次のようになる.
よって,
ここで, については, と置換することで,
∴
よって,
(与式)
…(答)
(3)
のとき,であるから,
等号条件はのときであり,では,
である.定積分と不等式との関係性より,
(1), (2)の結果より,
よって,題意は正しい.■
いかがでしょうか。
解いた感じは「入試基礎~標準問題」かなと思いました.
(1),(2)とも何か使えそうに見せた,実際はゴリ押しの問題なので,頭のスイッチをいかに早く切り替えれて,いかに間違えずに計算できたかどうかが勝負を分ける印象を受けました.一応(1)は別解を(余談)にまとめています.もしかしたら,ゴリ押さない解答があるかもしれませんが,私には思いつきませんでした…(>_<;)
(3)は(1),(2)の答えがそのまま使えることに注目すれば,定積分と不等式の関係をそのまま使うことで証明できますので,難しくないです.
〇 定積分と不等式の関係
区間] において, ならば,
※ 等号条件は,区間]において常にのとき.
なので,その区間内にとなる部分が存在することが確認できたら
と変わるので,少し記述に気を遣う必要があります.
描く必要はないですが,今回の問題のグラフは以下のようになります.
※ 下から
なんと,縦軸は0.001刻み!細かいです.
(余談)
ちなみに,(1)でベータ関数(第一種オイラーの積分公式)を使う方法もありますが,それを使うには要証明なので,それをするよりかは展開して解いた方が早いです.
ベータ関数の積分公式はこちらになります.
今回の問題はのときですので,
と求めることができますが,あくまでも検算用として使う方が良いでしょう.
これを一般式に拡張したものが第一種オイラーの積分と呼ばれるもので,
のときは,俗に言う「 公式」、 のときは「 公式」と呼ばれる有名なものですね.
実際に大阪教育大学や高知大学をはじめ,色々な大学で出題されています.証明については,また別の記事でまとめようと思います.
(3)については,不等式もに注目して書き換えると,
すなわち,
そして, なので,小数第2位までは近似できている不等式になります.(誤差0.015%未満)
実は,この問題の背景には古代ギリシアにおいて提唱された,の証明から始まります.これはアルキメデスをはじめ 何通りも与えられていますが,1944年にDalzell氏がこの不等式を発表し,当時の数学界において大きく注目が集まりました.数学者S.Lucas氏は「 の近似値に関する最も美しい結果の1つだ」と論文内で述べたほどです.
こちらが,当論文のURLになります.
http://www.austms.org.au/wp-content/uploads/Gazette/2005/Sep05/Lucas.pdf
Wikipediaにも「円周率が22/7より小さいことの証明」という項目で載っています.興味のある方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか.
ここまで見ていただきありがとうございました.
それでは,大問6以降は次回の記事で.