もりすの数学ブログ

大学入試数学の解説(仮)

2021 信州大学(医・理・経・工) 数学 大問7 解答&解説

こんにちは。もりすです。

今回は、信州大学(前期) [医・理・経・工]共通数学の大問7の解説を書いてみました。

大問7は極限・微分法・積分法(数学Ⅲ)に関する問題ですね。

(問題)

実数全体を定義域とする関数 f(x) は,全ての実数 a,b に対し,

f(a+b)=f(a)+f(b)+4ab

を満たすとする.さらに,関数 f(x)x=0微分可能で, f'(0)=2 であるとする.このとき,以下の問いに答えよ. 

(1)  f(0) の値を求めよ.

(2)  関数 f(x)区間  (-∞,∞)微分可能であることを示せ.また,関数 f(x) を求めよ.

(3)  関数 \displaystyle g(x)=\int_1^x \dfrac{1}{f(t)} dt (x\gt1) の極限 \displaystyle \lim_{x \to \infty} g(x) を求めよ.

 

私の解答

 (1)  条件式に a=b=0 を代入すると,   

f(0)=f(0)+f(0) より, f(0)=0  …(答)

(2)   f(x)導関数f'(x) とするとき,   

条件より, x=0微分可能であるので, \displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{f(h)}{h}=f'(0) が存在する.    

∴ \displaystyle\lim_{b\to 0}\dfrac{f(a+b)-f(a)}{b}

=\displaystyle\lim_{b\to 0}\dfrac{f(a)+f(b)+4ab-f(a)}{b} (∵ 条件)

= \displaystyle\lim_{b\to 0}\left(\dfrac{f(b)}{b}+4a\right)

=f'(0)+4a   

よって, f(x)区間 (-∞,∞)微分可能である.■   

上の式より, f'(a)=f'(0)+4a   

条件より, f'(x)=4x+2 なので,   

\displaystyle f(x)=\int f'(x)dx=2x^2+2x+C (ただし,C積分定数)   

(1) より,f(0)=0なので, C=0   

したがって, f(x)=2x^2+2x  …(答)

(3)  \dfrac{1}{f(x)}=\dfrac{1}{2x(x+1)}

ここで,\dfrac{1}{2x(x+1)}=\dfrac{A}{x}+\dfrac{B}{x+1} を満たすような実数 A,B を求めると,

(右辺)=\dfrac{A(t+1)+Bt}{t(t+1)}=\dfrac{(A+B)t+A}{t(t+1)}

これが,\dfrac{\dfrac{1}{2}}{t(t+1)}と恒等であればよいので,

\displaystyle \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} A + B = 0 \\ A = \dfrac{1}{2} \end{array} \right. \end{eqnarray}

すなわち,(A,B)=\left(\dfrac{1}{2},-\dfrac{1}{2}\right)

∴ \displaystyle g(x)=\dfrac{1}{2} \int_1^x \left(\dfrac{1}{t}-\dfrac{1}{t+1}\right)dt

= \dfrac{1}{2} \begin{bmatrix}\log{t}-\log{(t+1)}\end{bmatrix}_1^x

=\dfrac{1}{2} \begin{bmatrix}\log{\dfrac{t}{t+1}}\end{bmatrix}_1^x     

= \dfrac{1}{2}\left(\log{\dfrac{x}{x+1}}-\log{\dfrac{1}{2}}\right)   

ここで, \displaystyle\lim_{x \to ∞}\dfrac{x}{x+1}=1 なので, \displaystyle\lim_{x \to ∞}\log{\dfrac{x}{x+1}}=0

∴  \displaystyle\lim_{x \to ∞}g(x)=-\dfrac{1}{2}\log{\dfrac{1}{2}}

=\dfrac{\log2}{2}  …(答)

 

いかがでしょうか。

解いた感じは,入試標準問題という印象でした.

本問のトピックは関数方程式ですね.この手の問題は毎年どこかしらの大学で出題されているテーマです.

(2)は微分の定義式を用いて,条件の関係式と「f'(0) が存在すること」をうまく使えたかどうかが勝負を分けるでしょう.(3)は広義積分と呼ばれるもので,信大が好きなテーマの1つでもあります.今回の問題は部分分数分解をする基本積分と分数関数の基本極限ですので,f(x) が求められていたらサービス問題でしょう.

本解答では,部分分数分解を恒等式を使って丁寧にやっています.

〇 部分分数分解

\dfrac{1}{(x-a)(x-b)}=\dfrac{1}{a-b} \left(\dfrac{1}{x-a}-\dfrac{1}{x-b} \right) (ただし,a\neq b)

部分分数分解に関しては,私は見た瞬間に「数の部分で差をとって(この数を\alphaとします.),分母の小さい方から大きい方を引いた式に先ほど求めた数(\alpha)の逆数をかける」ということをしています.

部分分数分解は分数式の計算から始まって,数列や今回の積分など至る所で使えるテクニックですので,早いうちに習得してしまいましょう.

 

ここまで見ていただきありがとうございました。

それでは,また次回の記事で。